オーストラリア政府は「Online Safety Act」を改正し、16歳未満の子どもが主要SNSにアクセスすることを大幅に制限する方針を導入しました。これは、プラットフォーム側に「16歳未満の利用を防ぐための合理的な手段」を義務づけるものです。
1. 子どもの精神的健康を守るため
SNSの過度な利用が、不安・抑うつ・不眠・自己肯定感低下などの問題を引き起こす可能性が指摘されており、政府はこれを重大なリスクと判断しました。特に、いじめや不適切なコンテンツへの露出が増えることが大きな懸念となっています。
2. 保護者・教育現場からの強い要望
「子どものSNS利用を家庭で管理しきれない」という声が多く、教育関係者や保護者団体から規制強化を求める意見が高まっていました。社会的な要請に応えるため、政府が動いた形です。
3. 既存の年齢制限が実質的に機能していないため
従来のSNS規約(13歳以上など)は、年齢詐称などにより形骸化していました。政府はプラットフォーム側に法的な義務を課すことで、実効性を高める狙いがあります。
制限の仕組み(どのように実行されるのか)
- 政府が「年齢制限対象のSNS」を指定
- プラットフォームは年齢確認(Age Assurance)を導入する義務
- 16歳未満がアカウント作成・利用できないように措置を取る必要がある
- 違反した場合は罰金などの制裁を受ける可能性
導入にあたり、政府は年齢確認技術のテストなども進めており、段階的な適用が想定されています。
期待される効果
1. 子どものオンライン被害の軽減
いじめ、性的搾取、自己肯定感低下、過度な比較、睡眠不足などのリスクが軽減されると期待されています。
2. SNS企業の安全対策強化
年齢確認や安全設計を強化する圧力が高まり、プラットフォーム全体の安全性向上につながる可能性があります。
3. 社会に対する明確なメッセージ
「子どものネット安全を重要視する」という国の姿勢が示され、家庭・学校でのデジタルリテラシー教育も促されます。
問題点・懸念される副作用
1. 若者の回避行動(バイパス)が容易
VPN、偽アカウント、海外サービスの利用など、規制の抜け道が多く、完全な実効性には疑問もあります。
2. 規制対象外のサービスに若者が流れる可能性
ゲーム内チャットや小規模アプリなど、監視の難しい領域に子どもが移動し、逆にリスクが増える可能性があります。
3. 年齢確認のプライバシー問題
IDアップロードなどを求めるとデータ漏えいリスクが生じ、家庭の経済格差などで不公平が生まれる可能性があります。
4. 表現の自由の議論・法的争い
規制が過剰ではないかという声もあり、国内ではすでに訴訟の動きが出ています。
まとめ
オーストラリアの「16歳未満SNS制限」は、子どもの精神衛生や安全を守ることを目的とした強い規制です。一部の被害を軽減する効果は見込めますが、回避手段の存在やプライバシー問題、法的課題などもあり、単独で完全な解決策となるわけではありません。
今後は教育、家庭でのサポート、国際協調など、補完的な取り組みが重要となります。

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