日本銀行券はどうやって作られる?お札の製造工程と偽造防止技術をわかりやすく解説

経済・金融
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私たちが普段の買い物や支払いで使っている一万円札や千円札。これらの日本銀行券は、いったいどのように作られているのでしょうか。

お札は、普通の紙に金額や肖像を印刷するだけで完成するものではありません。丈夫な専用紙、精密な印刷技術、ホログラムやすかしなどの偽造防止技術が組み合わさって作られています。

また、お札を発行する日本銀行と、実際に製造する国立印刷局は、役割が異なります。

この記事では、日本銀行券の原料から製造工程、偽造防止技術、発行・流通の仕組みまで、初心者にもわかりやすく解説します。

1.日本銀行券は誰が作っているのか?

日本銀行券の製造と発行には、日本銀行と国立印刷局が関わっています。この2つの組織は、それぞれ異なる役割を担っています。

日本銀行はお札を発行する

日本銀行は、日本の中央銀行です。日本銀行券を発行し、金融機関を通じて社会に流通させる役割を担っています。

また、金融機関などから戻ってきたお札を受け入れ、真偽や損傷の程度などを確認し、再流通できるものと使用に適さないものを選別します。

国立印刷局はお札を製造する

国立印刷局は、日本銀行券を実際に製造する組織です。お札の用紙やインキ、原版の作製、印刷、検査、仕上げなどに関わっています。

日本銀行券は、財務大臣の製造命令に従い、日本銀行の発注に基づいて製造されます。国立印刷局が独自の判断で自由にお札を発行しているわけではありません。

つまり、日本銀行が発行を担い、国立印刷局が製造を担うという役割分担になっています。

2.日本のお札は何から作られているのか?

日本のお札には、一般的なコピー用紙とは異なる、耐久性などに優れた専用の紙が使われています。

主な原料として知られているのが、みつまたやアバカ(マニラ麻)などの植物繊維です。

みつまたとは?

みつまたは、和紙の原料として古くから利用されてきた植物です。繊維を利用して紙を作ることができ、日本のお札の原料としても知られています。

アバカとは?

アバカは、マニラ麻とも呼ばれる植物です。丈夫な繊維を持ち、紙の強度を高めるための原料として利用されます。

実際の用紙の構成や配合は製造仕様によって異なりますが、こうした繊維などを活用することで、お札に必要な強度や独特の手触りを実現しています。

なぜ普通の紙ではいけないのか?

お札は、毎日の買い物や銀行での入出金など、多くの場面で繰り返し使用されます。そのため、次のような性能が求められます。

  • 何度も折り曲げても簡単には破れないこと
  • 摩擦や汚れにある程度耐えられること
  • 細かな模様を鮮明に印刷できること
  • すかしなどの偽造防止技術を組み込めること
  • 本物と偽物を見分ける特徴を備えていること

お札の紙は、単に文字や絵を印刷するための紙ではありません。耐久性と偽造防止性能を備えた、特別な紙なのです。

3.日本銀行券が完成するまでの製造工程

日本銀行券は、用紙の製造から印刷、検査、仕上げまで、さまざまな工程を経て完成します。

STEP1.紙の原料となる繊維を加工する

まず、植物などから得られた繊維を加工し、紙の原料となる紙料を準備します。

繊維を水の中でほぐし、異物を取り除くなどの処理を行います。繊維同士が絡み合うことで、丈夫な紙を作るための下準備が整います。

STEP2.特殊な紙を作る

加工した繊維を使い、専用の紙を製造します。紙をすく工程では、すかしなどの特徴を組み込むことができます。

すかしは、紙の厚さを部分的に変えることで、光にかざしたときに肖像や模様が見えるようにする技術です。

完成した紙に肖像を普通に印刷するのとは異なり、紙そのものの構造を利用していることが特徴です。

STEP3.印刷用の原版やインキを準備する

お札には、肖像や背景の模様、細かな線、額面数字などが精密に描かれています。

これらを正確に印刷するため、専用の原図や原版を作製し、印刷に必要なインキなどを準備します。

原版の作製には高度な技術が必要であり、精密な図柄を再現することは、偽造防止の面でも重要な意味を持っています。

STEP4.複数の印刷技術で図柄を施す

お札には、複数の印刷技術が使われています。

色や模様を美しく表現するだけでなく、触ったときの凹凸や、傾けたときの見え方なども考慮して印刷されます。

印刷方法によって得意とする表現が異なるため、それぞれの技術を組み合わせることで、日本銀行券ならではの特徴が生まれます。

STEP5.品質を検査して仕上げる

印刷が終わったお札は、印刷状態などの品質を確認したうえで、所定の寸法に仕上げられます。

こうした工程を経て完成した日本銀行券は、日本銀行に納入されます。

お札は、紙を作って印刷すれば終わりではありません。安定した品質を保つための検査や管理も、製造工程の重要な一部なのです。

4.日本のお札にはどのような偽造防止技術が使われているのか?

2024年7月3日には、新しい一万円札、五千円札、千円札の発行が始まりました。これらのお札には、偽造を難しくし、本物を見分けやすくするためのさまざまな技術が採用されています。

① 3Dホログラム

新しい日本銀行券には、肖像が立体的に回転して見える3Dホログラムが採用されています。

お札を傾けると肖像などの見え方が変化します。紙幣にホログラムを採用することは、偽造防止技術の面でも注目される特徴です。

② 深凹版印刷

深凹版印刷は、インキを盛り上がるように印刷する技術です。額面数字などの一部に触ると、ざらざらした感触や凹凸を確認できます。

見た目だけでなく、触覚でもお札の特徴を確認できることがポイントです。

③ 高精細すき入れ

お札を光にかざすと、肖像などの模様が浮かび上がって見えます。これがすかしです。

新しい日本銀行券では、紙の厚さを精密に変化させる技術によって、繊細な濃淡を表現しています。

④ マイクロ文字

マイクロ文字は、肉眼では判別しにくいほど小さな文字を印刷する技術です。

通常のカラーコピーなどでは、このような細かな文字を鮮明に再現することが困難です。

⑤ パールインキや特殊発光インキ

お札には、角度によって光沢が見えるインキや、紫外線を当てると特定の部分が発光するインキなども使われています。

これらの特徴を組み合わせることで、偽造を難しくするとともに、本物かどうかを確認しやすくしています。

ただし、偽造防止技術は一つだけで成り立っているわけではありません。複数の技術を組み合わせることが重要です。

5.完成したお札はどのように世の中に出回るのか?

国立印刷局で製造されたお札は、日本銀行に納入されます。その後、日本銀行から金融機関へ渡り、私たちの暮らしの中で使われるようになります。

  1. 国立印刷局:日本銀行券を製造する。
  2. 日本銀行:納入されたお札を受け入れ、発行する。
  3. 民間の金融機関:銀行などが現金を供給する。
  4. 私たちの暮らし:ATMでの引き出しや買い物などでお札を使う。

ここで大切なのは、お札が製造された瞬間と、発行されて世の中に出回る瞬間は同じではないという点です。

国立印刷局が製造したお札は、まず日本銀行に納入されます。その後、金融機関を通じて社会に流通していきます。

なお、日本銀行券は、紙幣として発行されることによって、法律上の通貨として機能します。製造された段階ですでに私たちの財布に入るわけではありません。

6.古くなったお札はどうなるのか?

お札は、何度も手から手へ渡ることで、汚れたり、破れたり、傷んだりします。

傷んだお札が流通し続けると、使いにくくなるだけでなく、ATMや現金処理機などで読み取りにくくなる場合もあります。

そのため、日本銀行は金融機関などから戻ってきたお札を確認し、状態に応じて再び流通させたり、使用に適さないものを廃棄したりします。

廃棄されるお札は、一般に細かく裁断するなどして処分されます。

ただし、傷んだお札がすべて直ちに廃棄されるわけではありません。損傷の程度や状態などを踏まえて取り扱いが決められます。

このように、日本銀行券は発行して終わりではなく、流通、回収、選別という循環を繰り返しています。

7.お札をたくさん作れば日本は豊かになるのか?

ここまで読むと、「お札を作れるのなら、もっとたくさん作れば日本は豊かになるのではないか」と疑問に思うかもしれません。

しかし、お札を製造することと、国民の購買力や経済の豊かさが増えることは別の問題です。

お金が増えても商品やサービスが増えるとは限らない

仮に、世の中に出回るお金が増えても、商品やサービスの供給がそれに見合って増えなければ、物価が上昇する可能性があります。

例えば、同じ数の商品を多くの人が購入しようとすれば、需要が供給を上回り、価格が上がることがあります。

ただし、通貨供給量が増えれば必ず同じ割合でインフレになるわけではありません。物価は、需要と供給、賃金、金融政策、輸入価格、将来への期待など、さまざまな要因によって変化します。

お札の製造と政府の財政は別の問題

お札の製造量は、傷んだお札の交換や現金需要の変化などを踏まえて決められます。

お札を製造すること自体が、政府の財政赤字をそのまま埋め合わせることを意味するわけではありません。

お金の仕組みを理解するには、日本銀行の金融政策、政府の財政政策、物価の変化などを分けて考えることが大切です。

8.日本銀行券に関するよくある疑問

Q1.日本のお札はすべて日本国内で作られているのですか?

日本の日本銀行券は、国立印刷局が製造しています。用紙やインキ、印刷技術なども含め、専門的な製造体制が整えられています。

Q2.お札の製造費用はいくらですか?

製造費用は、用紙、インキ、印刷、検査、設備など、さまざまな要素によって変わります。正確な費用を知りたい場合は、対象年度の日本銀行や国立印刷局の公表資料を確認する必要があります。

また、額面が大きいお札ほど、製造費用も同じ割合で高くなるという単純な関係ではありません。

Q3.一万円札と千円札では作り方が違うのですか?

基本的な製造工程は共通していますが、肖像、図柄、色彩、額面を識別するための特徴などは券種によって異なります。

それぞれの券種に合わせて、偽造防止技術などが施されています。

Q4.古いお札は使えなくなるのですか?

新しいお札が発行されたからといって、従来のお札がすぐに使えなくなるわけではありません。過去に発行された多くのお札は、現在も有効な通貨として使用できます。

ただし、個別の券種には例外もあるため、古いお札を見つけた場合は日本銀行の公式情報で確認するのが確実です。

9.まとめ:日本のお札は高度な技術の結晶

日本銀行券は、単に紙に金額を印刷したものではありません。丈夫な専用紙、精密な印刷技術、すかしやホログラムなどの偽造防止技術が組み合わさって作られています。

  • 日本銀行は、お札を発行する役割を担っている。
  • 国立印刷局は、日本銀行券を製造している。
  • お札には、植物繊維などを利用した専用の紙が使われている。
  • 深凹版印刷、3Dホログラム、すかしなどの技術で偽造を防いでいる。
  • 完成したお札は日本銀行に納入され、金融機関を通じて流通する。
  • 古くなったお札は回収され、状態に応じて再流通や廃棄が行われる。

普段は何気なく財布から取り出している一万円札にも、紙づくり、精密印刷、光学技術、品質管理など、多くの技術が詰め込まれています。

お札の仕組みを知ることは、日本銀行の役割や金融システム、さらにはお金そのものへの理解を深めることにもつながります。

経済や金融の仕組みを理解するためにも、ぜひ日本銀行券の製造と発行の違いを押さえておきましょう。

参考資料

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