日本初の独立系半導体ファウンドリー「JSファンダリ」が破綻に至った経営戦略と失敗要因を徹底解説

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2025年7月、日本の半導体産業界に衝撃が走りました。パワー半導体の受託製造を手がけていた「JSファンダリ」が東京地裁に破産を申請し、手続き開始決定を受けました。負債総額はおよそ161億円。この記事では、同社の経営戦略、成長の方向性、そして行き詰まりに至った要因を詳細に解説します。

JSファンダリの経営戦略:3つの柱

① 特化型ファウンドリモデルの確立

JSファンダリは、電気自動車や再生可能エネルギー向けのパワー半導体に特化した「受託製造(ファウンドリ)」モデルを採用しました。これは国内初の試みであり、今後拡大が見込まれる分野への先行投資でした。

② 国内製造拠点の活用

新潟県小千谷市にある旧オン・セミコンダクター新潟の工場を引き継ぎ、地産地消型の製造体制を整備。既存のインフラを活かし、立ち上げコストを抑えつつ日本企業のサプライチェーン強化に貢献する狙いでした。

③ 技術・資本提携による成長

次世代素材であるSiC(炭化ケイ素)分野で、オキサイド社と技術提携。また、海外企業との資本提携を進め、資金面・技術面でのシナジーを模索していました。

経営の行き詰まり:主な5つの失敗要因

① 設備・人件費の過大負担

旧工場を引き継いだことで、老朽設備の維持や更新に多額のコストが発生。また、約530名という大規模な雇用体制が固定費を押し上げました。

② 売上不振と赤字体質

2023年度の売上は31億円でしたが、最終赤字は13.7億円。顧客基盤が未成熟で、安定した収益モデルを確立できていませんでした。

③ 技術・人材の競争力不足

世界の半導体競争は熾烈を極めており、開発スピードや製造プロセスの高度化で後れを取りました。人材確保や育成の遅れも影響しました。

④ 海外資本との提携失敗

海外企業との資本提携が破談し、予定していた資金調達が不成立。この結果、資金繰りが一気に悪化し、事業継続が困難となりました。

⑤ 国の半導体政策との連携不足

政府の支援はTSMC熊本工場などの先端半導体企業に集中し、JSファンダリのような中小独立系企業には十分な政策支援が及びませんでした。

まとめ:JSファンダリ破綻の本質

項目内容 戦略日本初の独立系パワー半導体ファウンドリー 強み国内製造、技術提携、事業の将来性 弱点高コスト構造、売上不足、資本不足 決定打海外資本との提携破談による資金ショート

JSファンダリは理想的なビジョンを掲げてスタートしましたが、資本・人材・市場・政策のいずれもが不十分であり、厳しい業界競争に耐えるには体力が不足していたと言えます。

日本における半導体再興の動きの中で、この破綻は多くの示唆を残しました。中小・独立型の製造企業が生き残るためには、戦略だけでなく、国家的支援や長期的視野に立ったパートナーシップが不可欠でしょう。

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