ニュースや経済の記事を読んでいると、「GDP」という言葉をよく目にします。一方で、「GNP」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
GNPは「国民総生産(Gross National Product)」のことで、かつて国の経済規模を表す重要な指標として使われていました。
現在の日本の国民経済計算では、GNPという名称は基本的に使われておらず、これに近い概念としてGNI(国民総所得)が使われています。
この記事では、GNPとは何なのか、GDPとは何が違うのか、そして現在使われているGNIとは何なのかを、できるだけわかりやすく解説します。
GNPとは何か?
GNP(Gross National Product)とは「国民総生産」のことです。
簡単にいうと、ある国の国民や企業が、国内だけでなく海外も含めて生み出した付加価値を表す指標です。
ここで重要なのが、「国内」ではなく「国民・居住者」を基準に考える点です。
例えば、日本企業がアメリカに工場を建設して、そこで生産活動を行ったとします。
その工場はアメリカ国内にあるため、その生産活動は日本のGDPには含まれません。
しかし、その工場から日本企業が所得を得れば、日本のGNIには反映されます。
つまり、GNP・GNIは「日本の企業や居住者が国内外からどれだけ所得を得ているのか」を見るのに適した指標です。
現在はGNPよりGNIが使われている
ここで注意したいのが、現在の経済統計では「GNP」という言葉が以前ほど使われなくなっていることです。
国民経済計算の体系が変更されたことに伴い、現在はGNI(Gross National Income:国民総所得)という指標が使われています。
GNPとGNIは厳密には概念上の違いがありますが、初心者が経済を理解する場合には、まず「GNPに代わって現在はGNIが使われている」と覚えておくと分かりやすいでしょう。
GDPとは何か?
GDP(Gross Domestic Product)とは「国内総生産」のことです。
GDPは、一定期間に国内で生み出された付加価値の合計を表します。
ポイントは「国内」です。
例えば、日本国内にアメリカ企業の工場があったとします。
その工場が日本国内で生産活動を行えば、その生産によって生み出された付加価値は日本のGDPに含まれます。
一方、日本企業がアメリカに工場を持っていて、そこで生産した場合、その生産活動は日本のGDPには含まれません。
つまりGDPでは、「誰が生産したか」よりも「どこで生産したか」が重要になります。
GDPとGNPの違い
GDPとGNPの違いを簡単に整理すると、次のようになります。
| 指標 | 意味 | 基準 |
|---|---|---|
| GDP | 国内総生産 | 国内のどこで生産されたか |
| GNP | 国民総生産 | どの国の国民・企業が生産したか |
| GNI | 国民総所得 | 居住者・企業が国内外から得た所得 |
非常に簡単に覚えるなら、
GDP=国内でどれだけ生産したか
GNP=国民がどれだけ生産したか
GNI=国民・居住者がどれだけ所得を得たか
と考えると理解しやすくなります。
具体例でGDPとGNIの違いを理解する
例1:アメリカ企業が日本で生産する
アメリカ企業が日本に工場を作り、そこで100億円の付加価値を生み出したとします。
工場は日本国内にあるため、これは日本のGDPに含まれます。
一方、その利益がアメリカの親会社など海外の経済主体に帰属する場合、日本の居住者が得る所得とは限りません。
そのため、日本のGNIがGDPと同じだけ増えるとは限りません。
例2:日本企業がアメリカで生産する
今度は、日本企業がアメリカに工場を作り、そこで100億円の付加価値を生み出したとします。
工場がアメリカ国内にあるため、この生産活動は日本のGDPには含まれません。
しかし、日本企業がその海外事業から配当などの所得を受け取れば、その所得は日本のGNIに反映されます。
このように、GDPとGNIでは経済活動を見る「場所」と「所得」の考え方が違います。
GNIはどのように計算する?
GNIの基本的な考え方は、次の式で表すことができます。
GNI = GDP + 海外からの純所得
ここでいう海外からの純所得とは、海外から日本の居住者などが受け取る第一次所得から、日本から海外の居住者などへ支払う第一次所得を差し引いたものです。
例えば、
- 海外から受け取る利子
- 海外から受け取る配当
- 海外事業から得られる所得
- 海外で働く人の雇用所得
などが関係します。
反対に、日本から海外へ支払う利子や配当などもあります。
その差額が「海外からの純所得」です。
日本ではGDPとGNIのどちらが大きい?
日本は海外に多くの企業や投資資産を持っているため、海外から受け取る第一次所得が大きい国です。
そのため、日本では一般的にGNIがGDPを上回る状態になっています。
これは、日本企業などが海外で事業を行い、そこから配当や利子などの所得を得ていることが大きな理由の一つです。
つまり、日本経済を考えるときには、国内だけを見るGDPだけでなく、海外から得ている所得まで含めて考えることが重要になります。
なぜ昔はGNPが重視されたのか?
かつて日本では、GNPが経済規模を示す代表的な指標として広く使われていました。
特に高度経済成長期には、「日本という国の経済力がどれだけ大きくなったのか」を見るうえでGNPが重要な役割を果たしていました。
しかし、経済のグローバル化が進むと、日本企業が海外に工場や子会社を設立することが増えていきました。
すると、
- 日本国内でどれだけ生産したのか
- 日本の企業や居住者が海外からどれだけ所得を得たのか
を分けて考える必要性が高くなりました。
そのため現在では、国内の経済活動を見る場合にはGDP、国民・居住者が国内外から得る所得を見る場合にはGNIというように、それぞれの指標を使い分けています。
GDPが増えれば国民は豊かになるのか?
GDPは経済の状態を知るための非常に重要な指標ですが、GDPが増えれば必ず国民一人ひとりが豊かになるとは限りません。
例えば、GDPが増えていても、
- 人口も同時に増えている
- 物価が大きく上昇している
- 利益が一部の企業や人に集中している
- 賃金が十分に増えていない
- 海外への所得流出が大きい
といった状況では、国民が感じる豊かさとGDPの成長が一致しない場合があります。
そのため、経済を見るときにはGDPだけで判断するのではなく、
- GNI
- 1人当たりGDP
- 1人当たりGNI
- 実質賃金
- 可処分所得
- 物価上昇率
などを合わせて見ることが重要です。
GDPとGNIは「どちらが重要」ではない
GDPとGNIは、どちらが優れているというものではありません。
何を知りたいのかによって使い分ける指標です。
国内の景気を知りたい場合
国内でどれだけ生産や消費、投資が行われているのかを知りたい場合には、GDPが重要です。
例えば、
- 日本国内の景気
- 個人消費
- 設備投資
- 政府支出
- 国内の生産活動
などを見る場合にはGDPが役立ちます。
日本の所得を知りたい場合
日本の企業や居住者が国内外からどれだけ所得を得ているのかを見る場合には、GNIが重要になります。
特に海外に多くの事業や資産を持つ国では、GDPだけでは把握しにくい「海外からの所得」を確認することができます。
GDP・GNP・GNIをまとめて理解しよう
ここまでの内容を整理すると、次のようになります。
| 用語 | 日本語 | ポイント |
|---|---|---|
| GDP | 国内総生産 | 国内で生み出された付加価値 |
| GNP | 国民総生産 | 国民・企業による国内外の生産 |
| GNI | 国民総所得 | 居住者・企業が国内外から得た所得 |
そして、現在の経済統計を理解するうえでは、GNPよりもGNIという言葉を覚えておくことが重要です。
GNP・GDP・GNIの覚え方
最後に、できるだけ簡単に覚えておきましょう。
GDP=「日本国内」で生み出されたもの
GNP=「日本の国民・企業」が生み出したもの
GNI=「日本の居住者・企業」が国内外から得た所得
特に重要なのは、
GDP=場所を重視
GNI=所得を重視
という違いです。
まとめ
GNPとは「国民総生産(Gross National Product)」のことで、かつて国民・企業の経済活動を測る重要な指標として使われていました。
現在の日本の国民経済計算では、GNPという名称は基本的に使われず、これに近い概念としてGNI(国民総所得)が使われています。
GDPは「国内でどれだけ生産したか」を表すのに対して、GNIは「日本の居住者や企業が国内外からどれだけ所得を得たか」という違いがあります。
特に海外に多くの企業や資産を持つ日本では、GDPだけでなくGNIを見ることで、日本の経済をより多面的に理解できます。
経済ニュースを読むときには、「GDPは国内」「GNIは国内外からの所得」と覚えておくと、経済指標の意味がかなり分かりやすくなるでしょう。
この記事のポイント
- GNPは「国民総生産」のこと
- 現在はGNPよりGNI(国民総所得)が使われている
- GDPは「国内」を基準にする
- GNIは「居住者・企業の所得」を基準にする
- 日本では海外からの所得が大きく、GNIがGDPを上回る傾向がある
- GDPだけで国民の豊かさを判断することはできない
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