ニュースを見ていると、「景気後退」「リセッション」「不況」といった言葉を目にすることがあります。
しかし、「景気後退とは具体的にどのような状態なのか」「GDPがマイナスになれば景気後退なのか」「景気後退になると給料や株価はどうなるのか」など、詳しく説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。
景気後退は、私たちの生活や仕事、企業業績、株価、金利など、経済全体に大きな影響を与えます。
この記事では、景気後退とは何なのか、その原因や生活への影響、株価との関係、リセッションや不況との違いまで、できるだけ分かりやすく解説します。
景気後退とは何か?
景気後退とは、それまで拡大していた経済活動がピークを迎え、その後、縮小方向へ向かう状態のことです。
景気が良いときには、企業の売上や利益が増え、設備投資や採用が増えます。
給料が増えれば消費も増え、企業の売上がさらに増えるという好循環が生まれます。
一方、景気後退になると、これとは逆の動きが起こりやすくなります。
- 消費が減る
- 企業の売上が減る
- 企業の利益が減る
- 設備投資が減る
- 採用が減る
- 所得が伸びにくくなる
- 失業率が上昇することがある
つまり景気後退とは、経済全体の勢いが弱くなっていく局面だと考えると分かりやすいでしょう。
景気後退と「不景気」は同じなのか?
「景気後退」と「不景気」は似た言葉ですが、厳密には少し意味が異なります。
不景気は、「景気が悪い」という状態を日常的に表す言葉です。
一方の景気後退は、景気が拡大局面から縮小方向へ転換する局面を指す、より経済学的な表現です。
簡単に整理すると、次のように考えると分かりやすいでしょう。
- 不景気=景気が悪い状態を広く表す言葉
- 景気後退=景気がピークを過ぎ、経済活動が縮小方向へ向かう局面
景気には「波」がある
経済は、永遠に成長し続けるわけではありません。
一般的には、次のような景気循環を繰り返します。
景気拡大 → ピーク → 景気後退 → 景気の底 → 回復 → 景気拡大
つまり、景気後退は経済活動の一部分です。
景気後退になったからといって、経済が永遠に悪化するという意味ではありません。
景気が底を打った後、再び回復へ向かうこともあります。
景気後退はなぜ起こるのか?
景気後退には、さまざまな原因があります。
一つの原因だけではなく、複数の要因が重なって景気後退に陥るケースもあります。
1.個人消費が減少する
景気後退の大きな原因の一つが、個人消費の減少です。
例えば、物価が上昇したり、将来への不安が強くなったりすると、人々は支出を抑えるようになります。
「今は必要なものだけ買おう」と考える人が増えると、企業の売上が減少します。
企業の売上が減れば、利益も減り、設備投資や採用を抑える動きにつながる可能性があります。
2.企業の設備投資が減少する
企業も景気が悪くなると慎重になります。
例えば、「これから商品が売れなくなるかもしれない」と考えれば、新しい工場を建設したり、新しい機械を導入したりすることを延期するかもしれません。
設備投資が減少すると、建設業や製造業、機械メーカー、物流会社など、幅広い業種に影響が及びます。
3.金利が上昇する
金利上昇も景気後退の原因になることがあります。
中央銀行がインフレを抑えるために利上げを行うと、企業や個人がお金を借りるコストが上昇します。
すると企業は設備投資を控え、個人も住宅購入などの大きな支出を控える可能性があります。
その結果、経済活動が冷え込むことがあります。
つまり、
インフレを抑えるための利上げが、景気を冷やしすぎて景気後退を招く
という難しい問題が生じることがあります。
4.物価高が消費を冷やす
物価が上昇すると、家計の負担が大きくなります。
- 食料品
- 電気・ガス
- ガソリン
- 日用品
- 住宅関連費
などの価格が上昇しても、給料が同じペースで増えなければ、実質的な購買力は低下します。
すると、外食や旅行、高額商品の購入などを控える人が増える可能性があります。
消費が減少すれば、企業の売上にも影響します。
5.海外経済が悪化する
日本は海外との貿易やサプライチェーンに深くつながっています。
そのため、アメリカ、中国、欧州などの景気が悪化すると、日本企業にも影響が及ぶことがあります。
例えば海外で自動車の販売が減少すると、自動車メーカーだけでなく、部品メーカーや素材メーカー、物流会社などにも影響が広がる可能性があります。
このように、海外の景気後退が日本の景気後退につながることもあります。
景気後退になると何が起こる?
企業の売上が減少する
消費や設備投資が減少すると、企業の売上が減少しやすくなります。
売上が減少すれば、利益も減少する可能性があります。
ボーナスや昇給が抑えられる
企業の業績が悪化すると、ボーナスを減らしたり、昇給を抑えたりする企業が増える可能性があります。
景気後退が長期化すると、家計にも大きな影響を与えることがあります。
求人が減少する
企業が将来の売上に不安を感じると、新規採用を控える場合があります。
そのため景気後退では、求人の減少や就職環境の悪化につながることがあります。
失業率が上昇することがある
景気後退が深刻になると、企業が人員削減を行うケースもあります。
その結果、失業者が増加し、失業率が上昇する可能性があります。
ただし、景気後退になったからといって必ず大量の失業が発生するわけではありません。
企業が従業員を維持しながら景気回復を待つケースもあります。
景気後退になると株価はどうなる?
景気後退が予想されると、株価が下落することがあります。
景気が悪化すると、企業の利益が減少すると予想されるためです。
基本的な流れは、
景気悪化の予想
↓
企業利益の減少予想
↓
株式を売る投資家が増える
↓
株価が下落
というものです。
ただし、重要なのは、株価は実際の景気より先に動くことがあるという点です。
投資家が「これから景気が悪くなりそうだ」と判断すれば、実際に景気後退が始まる前から株価が下落することがあります。
逆に、「景気はそろそろ底を打つだろう」と判断すれば、景気がまだ悪い段階から株価が上昇することもあります。
景気後退=株価暴落ではない
「景気後退になったら株価は必ず暴落する」と考えるのは正確ではありません。
軽い景気後退であれば、株価が一時的に下落する程度で終わることもあります。
一方で、金融危機や信用収縮などを伴う深刻な景気後退では、株価が大幅に下落する可能性があります。
そのため、株式投資を考える場合には、単に「景気後退かどうか」だけではなく、景気後退の原因や深さ、長さを見ることが重要です。
GDPがマイナスになれば景気後退なのか?
景気後退を説明するとき、「GDPが2四半期連続でマイナスになれば景気後退」という説明を見かけることがあります。
これは分かりやすい目安として広く知られています。
しかし、GDPが2四半期連続でマイナスになったかどうかだけで、景気後退を機械的に判断するわけではありません。
景気を判断する際には、GDP以外にもさまざまな経済指標が利用されます。
- 雇用
- 所得
- 個人消費
- 企業活動
- 鉱工業生産
- 設備投資
- 求人状況
などを総合的に見る必要があります。
日本では景気をどのように判断するのか?
日本では、内閣府が公表する景気動向指数など、さまざまな経済指標が景気判断に利用されています。
景気は一つの数字だけで判断できるものではありません。
GDP、個人消費、企業活動、雇用、所得、設備投資など、複数のデータから経済全体の動きを確認することが重要です。
景気後退とリセッションの違い
ニュースでよく聞く「リセッション(Recession)」は、一般的に日本語で「景気後退」と訳されます。
そのため、基本的には、
景気後退 ≒ リセッション
と考えて問題ありません。
ただし、国や機関によって景気後退を判断する基準には違いがあります。
景気後退と恐慌は違う
「景気後退」と「恐慌」も同じではありません。
景気後退は、経済活動が縮小する局面を指します。
一方、恐慌は、非常に深刻な経済危機を表す言葉です。
つまり、景気後退がすべて恐慌になるわけではありません。
比較的短期間で回復する景気後退もあれば、金融危機などを伴って深刻化するケースもあります。
景気後退とスタグフレーション
通常、景気が悪くなると物価上昇も弱くなると考えられます。
しかし、景気が悪いにもかかわらず物価が上昇することがあります。
これがスタグフレーションです。
スタグフレーションは、景気停滞を意味する「Stagnation」と、物価上昇を意味する「Inflation」を組み合わせた言葉です。
例えば、原油価格が大幅に上昇すると、企業のコストが増加します。
企業が商品の価格を引き上げると、消費者の負担も増えます。
その結果、
原油価格上昇
↓
企業コスト上昇
↓
商品価格上昇
↓
消費者の負担増加
↓
消費減少
↓
景気悪化
という流れが生まれる可能性があります。
これは政府や中央銀行にとって非常に難しい経済状況です。
景気後退になったら政府は何をする?
景気が悪化すると、政府は景気を支えるための政策を行うことがあります。
代表的なのが財政政策です。
- 給付金
- 減税
- 公共投資
- 補助金
- 雇用対策
などを通じて、経済活動を支えようとします。
中央銀行は何をする?
中央銀行は、金融政策によって景気を支えることがあります。
代表的なのが利下げです。
金利を引き下げることで、企業や個人がお金を借りやすくなります。
すると、
金利低下
↓
借入コスト低下
↓
設備投資・住宅購入・消費などが増える
↓
経済活動を刺激する
という効果が期待されます。
ただし、インフレが強いときには、景気が悪化していても簡単に利下げできない場合があります。
ここが金融政策の難しいところです。
景気後退は悪いことなのか?
景気後退は、基本的には企業や家計にとって望ましい状態ではありません。
しかし、景気後退には、過熱した経済を調整するという側面もあります。
景気が過熱しすぎると、物価や資産価格が急激に上昇し、バブルにつながる可能性があります。
そのため、経済には一定の調整が必要になる場合もあります。
重要なのは、景気後退が起きるかどうかだけではなく、どの程度深く、どのくらい長く続くのかという点です。
私たちは景気後退にどう備えればいい?
個人が景気後退そのものを止めることはできません。
だからこそ、景気が悪くなっても生活を維持できる家計を作っておくことが重要です。
1.生活防衛資金を確保する
景気後退によって収入が減ったり、仕事を失ったりする可能性に備え、一定の現金を確保しておくことが大切です。
2.借金を増やしすぎない
金利が上昇すると、住宅ローンなどの返済負担が増える可能性があります。
自分の収入に対して無理のない借入額を意識することが重要です。
3.固定費を見直す
景気後退に備えるうえでは、毎月必ず発生する固定費を抑えることも有効です。
- 通信費
- 保険料
- サブスクリプション
- 住宅費
- 自動車関連費
などを定期的に見直してみましょう。
4.収入源を一つに依存しすぎない
本業以外のスキルや収入源を持っておくことも、長期的なリスク対策になります。
副業や資格取得、スキルアップなど、将来的な選択肢を増やしておくことも有効です。
5.投資では焦らない
景気後退局面では、株価などの資産価格が大きく変動することがあります。
短期的な値動きに振り回されないためにも、投資目的やリスク許容度をあらかじめ明確にしておくことが重要です。
景気後退は「景気の終わり」ではない
「景気後退」という言葉を聞くと、「日本経済はもう終わりなのではないか」と不安になる人もいるかもしれません。
しかし、景気後退は経済の循環の一部です。
景気拡大 → 景気後退 → 景気の底 → 回復 → 再び拡大
という循環が繰り返されることがあります。
したがって、景気後退という言葉だけを見て悲観するのではなく、景気後退の原因、深さ、期間、そしてその後の回復可能性を見ることが大切です。
まとめ:景気後退とは経済活動が縮小する局面
景気後退とは、それまで拡大していた経済活動がピークを迎え、その後、縮小方向へ向かう局面です。
原因には、個人消費の減少、企業の設備投資減少、金利上昇、物価高、海外経済の悪化、金融危機などがあります。
景気後退になると、企業の売上や利益が減少し、設備投資や採用が抑えられる可能性があります。
その結果、給料やボーナス、雇用、株価などにも影響が及ぶことがあります。
一方で、景気後退は必ずしも「経済の終わり」を意味するわけではありません。
経済には循環があり、景気後退の後に回復局面が訪れることもあります。
私たちにとって大切なのは、景気後退を必要以上に恐れることではなく、景気が悪化しても耐えられる家計や資産形成を普段から準備しておくことです。
「景気後退」という言葉を理解すると、GDP、金利、株価、失業率、インフレ、金融政策など、ニュースで頻繁に登場する経済用語が一つの流れとして見えてくるようになります。
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